No.25 24 November , 2005
太陽の軌跡を撮影しよう!〜全天カメラの紹介〜

宮城教育大学惑星科学研究室の千島さんと高田先生から全天カメラによる日周運動の教材製作の報告をいただきました。 全2回の予定で、本号ではデジタルカメラと魚眼コンバージョンレンズで製作した全天カメラの紹介をします。

Ms. Takataからのロンドン便り第7弾は、米国天文学会(AAS)惑星科学部会(DPS)への参加報告です。

平成18年度の科学研究費補助金(奨励研究)についてのページが公開されました。申請を考えている方はアクセスを!

全天カメラによる太陽の日周運動の映像教材製作―1:全天カメラの紹介

宮城教育大学 惑星科学研究室  千島拓朗・高田淑子

180度の視野があるレンズをデジタルカメラに装着して、全天カメラを製作しました。全天カメラを天頂に向けて一定時間間隔で撮像することで、太陽の天球上の軌跡―太陽の日周運動を映像として記録することができます。年間を通して様々な地域の太陽の日周運動の映像を取得できれば、太陽の天球上の位置の日変化、季節変化、地域変化がわかります。今回は全天カメラをご紹介し、次回の通信では、これらで撮像した太陽の日周運動の映像をご紹介する予定です。 全天カメラは、図1のように、デジタルカメラに.図2のデジタルカメラ用魚眼コンバージョンレンズを取り付けたものです。

図1全天カメラ概要。
デジタルカメラに市販デジタルカメラ用魚眼レンズをつけ、さらに水準器を貼り付けている。
図2 全天カメラに取り付けた魚眼コンバージョンレンズ(魚露目8号、フィット社)。

撮像カメラは、当初安価でインターネット配信が可能なwebカメラを検討しましたが、良質な画質が得られずにあきらめざるを得ませんでした。結局、現在は、市販のインターバル撮像機能、防水機能があり、太陽光でできる画像上のスミアを除去できる機能のついたデジタルカメラとして、PENTAX社のOPTIO-43WRを利用しています。太陽の位置を明確にするため、できる限り太陽自体の画角を小さくしたいので、露出時間やゲイン(露出時間は自動で、露出補正が調整可能)の調整が可能で有効画素数が十分あるものも選択の理由の一つです。また、全天の視野を一画像に撮像するために魚眼レンズなどの広角レンズを用いる必要がありますが、一眼レフと一眼レフ用の魚眼カメラは高価でなかなか手がでません。そこで、DIYショップで市販しているドアスコープを試してみましたが、レンズ径が1cm以下と小さく、デジタルカメラのレンズとの接続が難しく、安定した接続ができませんでした。そこで、今回、コンパクトデジタルカメラ用に市販されている魚眼コンバージョンレンズ(魚露目8号、フィット社)を用いてみました(図2)。デジタルカメラ用に製作され、カメラとの接続が容易である以上に、等距離射影されるということなので、取得画像の解析が容易になると思われたためです。また、カメラ本体を水平に設置するために、DIYショップで市販されている水準器を両面テープでカメラ本体に取り付けました。

デジタルカメラに三脚を取り付け野外に設置すると図3のようになります。カメラの使用環境は、気温0−40度と言う仕様でしたが、気温が10度くらいになると、インターバル撮像が止まることもありました。そこで、実際には、梱包材でレンズ以外のカメラ全体を覆い、さらに、使い捨てカイロを利用してカメラを保温しました。また、広い視野を確保するために、カメラより高い位置には視野を遮る建物などがないことも重要です。

図3 全天カメラを野外に設置した様子。
三脚に設置したカメラを天頂に向ける。また、カメラの向きは南北方向にあわせると後の解析がやりやすい。

インターバル撮像機能で、日の出から日没まで一定の時間間隔で撮像するように設定します。1分間隔で撮像すると雲の流れも捉えられ映像として見応えがありますが、インターバル撮像の連続撮像最大枚数が限られているため、撮像途中で再設定が必要になります。撮像画像は、1GBのSDメモリーカードに保存され、後日、パソコンで画像処理を行い映像化します。 また、撮像システムの射影の誤差測定を行うために、天文ソフト、ステラナビゲーター(アストロアーツ社)を用いて太陽高度・方位の計算値と実際の高度と方位角の観測値を比較しました。この結果、高度15度以下は、等距離射影が見られず、高度・方位角の読みとりは困難でしたが、高度15度以上では観測誤差も含めて誤差は2.5度以内となり、初等教育で利用するには十分と思われます。撮像画像例を図4に紹介します。これは、仙台市(宮教大の屋上)で夏至の日の南中時(2005年6月21日午前11時43分)に撮像した画像に、後ほど高度・方位角の座標を重ね合わせたものです。

図4 太陽高度の撮像例。
2005年6月21日午前11時43分(南中時)における方位・高度が読みとれる。淡く白い円形(方位0度、高度73度)が太陽。仙台市(宮教大屋上北緯38度)にて撮像。

現在市販のデジタルカメラの低価格化も手伝い、この全天カメラは、総額5万円程度の費用で製作できました。魚眼コンバージョンレンズは約7千円でしたので、手持ちのデジタルカメラや三脚があれば、個人で製作することも十分可能です。 次回の通信では、これを用いて撮像した映像等について、ご紹介したいと思っています。 いままで、斉藤正晴先生(尚絅女学院)、伊藤芳春先生(鶯沢工業高校)、野田貴洋先生、高橋知美先生、黒木充先生(宮教大附属中学校)、松下真人先生(山梨科学館)、佐々木佳恵先生(花巻中学校)、市川仁先生(仙台市立科学館)、M. M. Dworetsky(ロンドン大学天文台長)のご意見を賜っていますが、今後も活用方法、改善等に関し、様々なご意見お待ちしています。

ロンドン便り 第7弾
米国天文学会(AAS)惑星科学部会(DPS)に参加しました

ロンドンカレッジ大学 高田淑子

上記学会が今年9月4日―9日の間、英国ケンブリッジで開催されました。毎年、米国内で行われる惑星科学関係の大きな学会で、今年は英国王立天文学会と共催でケンブリッジでの開催となりました。

毎年、この学会では、「カールセーガン賞」という賞がパブリックアウトリーチに貢献した人に与えられます。今年は、NASAのジェット推進研究所のロペス女史に贈られました。彼女らは、惑星科学の分野で、生徒、教師、TV,ラジオ、開発途上国等に広報活動を展開しています。彼女のスピーチで印象的だったのは、子供たち、特に高等教育を受ける前(すなわち、自分の進路を決める前)に、惑星科学に触れさせることがとても大事だということでした。これらの経験が子供たちをサイエンスの道に進ませ、そしてその一部が最終的に研究者へと育っていくのだと言うことでした。
特に、米国には300万人のガールスカウトがいて、その指導者を30人トレーニングすると、2万人のガールスカウトのトレーニングにつながり、将来サイエンスを選ぶ女子学生も輩出できるということでした。特に、ガールスカウトのトレーナーは行動力が高く、とても効率的な惑星科学教育が行えるということでした。開発途上国の支援でも、教員の支援がとても大事であるとのこと、宮教の理科教育講座のJICAの取り組みとの通じるところがありました。さて、彼女が紹介したアクティビティのホームページをいかに掲げますので、是非ご覧ください。E/PO(Education and Public Outreach)は、いかなる研究機関においても現在重要なプログラムとして予算配分されています。

PUMAS(理数科系の学校教育プログラムの紹介) http://pumas.jpl.nasa.gov/
COSMOSEDUCATION(開発途上国の教育サポート)http://www.cosmoseducation.org
米国西部のE/POの概要について http://ssibroker.colorado.edu/Broker/

最後に、本学会は、子供禁止。講演の立ち見はだめなど、仰々しく英国らしい(?)不便な学会でした。日本でも今となってはどこの学会でも保育室を設けている時代にです。日本から来ていた研究者も物価の高さに驚いており、「高い、不便、noble」という英国の中の英国を見た気がする学会でした。

米国天文学会(AAS)惑星科学部会(DPS)はこちら http://www.aas.org/~dps/dps.html

平成18年度科学研究費補助金(奨励研究)に申請しませんか

24号で宮城県鶯沢工業高等学校の伊藤芳春先生にご紹介頂きましたが、平成18年度の科学研究費補助金(奨励研究)についてのページが公開されました。以下のリンクです。
http://web.jsps.go.jp/j-grantsinaid/11_shourei/

応募受付期間は平成18年1月17日(火)〜1月19日(木)の3日間です。申請を考えている方!お忘れなく…今から準備をしておきましょう!

みなさんの活動報告をお待ちしております

みなさんの活動報告を通信に発表してみませんか!引き続き、たくさんの投稿をお待ちしております。

※本ページ内に記載されたリンクは発行時現在の情報です。
連絡先:宮教大インターネット天文台事務局 三澤宇希子 ( メールフォームへ
今までの活用事例を、星空観察ネットの広場(http://www.hosizora.miyakyo-u.ac.jp/)で紹介しています。是非ご覧ください。